Library and Information Science

Library and Information Science ISSN: 2435-8495
三田図書館・情報学会 Mita Society for Library and Information Science
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Library and Information Science 9: 39-48 (1971)
doi:10.46895/lis.9.39

原著論文Original Article

図書館学の理念A philosophy of librarianship

発行日:1971年9月1日Published: September 1, 1971
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真実の探究のために有用性を尊重するかぎりにおいて,図書館員が実用主義的であるからといって責めるのは当を得ない。図書館員は明らかに技術的な面を重視しすぎるが,その奥にひそむ原理を追究しようという信念をもつ。図書館業務は補助的役割しか果たさないというコンプレックスは現今の知的・精神的思想に影響を与える一般的否定主義の適例である。

しかし,図書館職は知的・精神的に尊重されている数少ない専門職であり,学問の到達すべき目標とのかかわりをもっている。図書館職は人類にとって最も重要な知識の記録を保存し,配布し,調査し,解明することに専念する専門職である。ここにいう知識の記録とは人間のコミュニケーションの可能性を拡げる総体としての“広義の図書”である。

今日,非図書資料と定義されるものが図書館に入ってきつつあるという主張は歴史的にみて正確ではない。歴史的にみた場合,印刷術の発明以前には,泥土板とか,パピルスとか,羊皮紙とかが,それぞれ図書館の図書と認められていた時代があったのである。15世紀には,写本だけが図書館の図書であると主張し,新しく生産された活字印刷物は非図書資料であると考える図書館員がいたのである。

以上のような広義の図書概念をとりあげることが筆者の原理追究の一部をなしており,媒体の形態的特質がコミュニケーションのあり方に影響を与えるという考え方から,図書の形態的分類,図書選択の基本的な考え方などが生まれてくる。

図書館学は過度に専門化される傾向を示す諸科学が求めている普遍主義に貢献する有利な位置を占めている。Snowのいうように,“二つの文化”があるとするならば,図書館学はこの二つの文化を総合することを認めなければならないだろう。20世紀中葉の思潮には,科学的方法を過度に重視する傾向があるが,それだけが真理探究の方法ではない。図書館員は哲学者と同じように,専門分化されている学問のあいだのバランスをとる義務がある。筆者はこのような考え方にたって,これまで数多く発表した所説の位置づけを行ないながら,一人の図書館員としての自分の原理的な考え方を展開している。

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