Library and Information Science

Library and Information Science ISSN: 2435-8495
三田図書館・情報学会 Mita Society for Library and Information Science
〒108‒8345 東京都港区三田2‒15‒45 慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻内 c/o Keio University, 2-15-45 Mita, Minato-ku, Tokyo 108-8345, Japan
http://www.mslis.jp/ E-mail:mita-slis@ml.keio.jp
Library Science 3: 41-47 (1965)
doi:10.46895/ls.3.41

原著論文Original Article

英米文学のレファレンス・サーヴィスReference service in English and American literature

発行日:1965年7月1日Published: July 1, 1965
PDF

これは英米文学に深い知識をもつレファレンス・ライブラリアンが配属され,この分野の参考資料が使えるようになっている,よく整備され充実された参考図書館における日常の問題について検討を加えたものである。この問題にかかわる要因として文学,参考質問,質問者および情報源の性格をあげることができる。その場合,分野を英米文学に限ったのは,とりあげる資料の例を限定するためである。しかし最近の文学を概観すると,定量化を考えたり,厳密な研究法を採用したりする注目すべき新しい動向がある。研究とその成果の出版は学術団体を通じて財団から多くの支援を受けつつある。学術出版を補助し,学者に研究時間の余裕を与えることは出版物の増大をもたらした。研究・養成について国家的な助成も行なわれている。しかし,とりわけ重要なことは人文科学自体が科学の影響を受けつつあるということである。また,アメリカ人文科学財団の設立も勧告されている。このような状況において文学の分野についてみると,その形式は変ろうとも,その本質は変るものではないし,また図書館とそのコレクションは変ろうとも文学に対する責任が変るわけではない。その責任は増大するのみである。

文学の性格をみるに,散文,韻文,とくに形式・表現がすぐれている作品,永遠普遍の事柄を表現している作品は創造力のある作家,評論家によって文学作品とよばれている。永遠普遍の事柄という考えが含まれていることは,文学が書かれた言葉であらわされる過去を摂取している証拠である。

Asheimは文学関係のコレクションを(1)創作,(2)その批評,(3)文学理論,および(4)史的・解釈的分野に分けているが,大学図書館,公共図書館はコレクションの充実のために,Choice,Sewanee Review,Kenyon Review,Scholarly Books in America,The Times Literary Supplement,The New York Review of Booksなどの資料を利用することができる。

次に参考質問は定義,識別,説明を求めるものの3つのカテゴリーに分けられる。しかし,質問を出した人との関係において,その質問をみると,3つのカテゴリーにきちんと分けられるわけではない。作家自身は何を尋ねるかわからないし,歴史小説家の質問が社会史に,科学小説家の質問が科学に,詩人の質問が美術,音楽に属するかも知れない。それらの質問を予測することはできない。

評論家の質問は以前は予測しやすかったが,すでに述べたような趨勢のもとでは,次第に予測ができにくくなり,もっと学問相互間の関連の面からアプローチすることが必要となろう。大学院学生の質問は評論家のそれと類似している。しかし彼らは過去の文学に対する親しみがうすく,実際に何を求めているのか不確かである。もっと不確かなのが学部学生であり,さらに生徒も,彼なりにペーパーを書かねばならぬ。

最後に,いわゆる一般の読者がいる。この人たちも原稿を準備したり,最近の小説の書評を求めたりする。こうした様々の質問者が次々とやってくる。レファレンス・ライブラリアンは主題知識に身を固め,コレクションの知識をたずさえて,やってくる人を待ち構えている。筆者はその際に利用する資料として,主題文献案内,著者書誌その他の書誌・索引,コンコーダンス,特殊集書の目録,一般参考図書などのタイトルを例示している。

最後に図書館機構について触れている。大公共図書館,大学図書館におけるレファレンス・サーヴィスは主題部門化への傾向を辿りつつあり,新築,改築があると参考部に人文科学課がつくられる。この課にはその専門主題について広く深い知識を備えた図書館員を配属せしめている。これらの主題専門家は学者に対して,もっと書誌的援助を提供し,一般読者にもっと個人的サーヴィスをなすべきであるというのが一般的な意見である。レファレンス・ライブラリアンは要求さえあれば,その要求に応えることができる。

(M. N.)

This page was created on 2022-07-28T17:03:53.102+09:00
This page was last modified on


このサイトは(株)国際文献社によって運用されています。