英国では1972年に2627名が図書館学校に在籍し,うち63名は修士・博士課程にある。542名はpostgraduateコース(大卒1年),1406名は図書館協会(LA)の司書資格をめざし,学部の2年課程にいる。残り616名は学部で図書館学を主専攻とする学士号コースにある。
全日制図書館学校は15あるが,そのうちuniversityにあるのは,ストラスクライド,シェフィールド,ベルファストおよびロンドンの4大学のみである。他はcollegeまたはpolytechnicに含まれるが,そのうちウェールズおよびラフバラ,およびリーズは隣接のuniversityとの間に学位コースの特約を結んでいる。College等ではCouncil for National Academic Awards(CNAA)の学科別認定により学位(学士相当)を授与できるが,現在6校のみが認められている。この制度はカレッジ教育の水準を高め,学生の成績優秀なものは,上級学位への接続を可能ならしめるための処置である。英国では終局的には学部2年制のLA受験コースは廃止され,CNAAコースに代えられるであろう。
図書館学校の数が増加するとともに,英国図書館学校協会(ABLS)が組織された。当初は少数の個人会員により,教科についての研究などが行われ,むしろLAの統ー試験のために教授理念の統一が目的であった。1964年に学校をメンバーとする組織に改組されてから,活動目標は政策,管理にむけられるようになった。今日,ABLSは大学の管理部門とLAとの中介者として行動し,たとえば図書館審議会,CNAA,あるいは教育・科学省の委員会などに代表を送っている。
LAとABLSの共通の問題として,たとえば中年から図書館職への転入者とか,学生の奨学金の問題がある。学部学生はばとんど奨学金を得ているが,postgraduateでは約半数である。研究助成金はもっと少いが,これによってフルタイムの研究助手の採用が可能であり,修士以上の学位を取得するものも若干ある。
図書館は本来他のすべての学問に奉仕するものであるから,学際研究はそれ自体我々にとって新しいものではなく,今日その程度がさらに高くなったことが新しい問題点を呈示している。図書館学は一見その研究領域を広げたようであるが,その基盤に対する反省は不十分であった。カレッジあるいはユニヴァーシティー内での他専攻との協力はこの点でも必要であるが,これを実現するためにはより以上の善意と忍耐を要するであろう。
学際研究のはなやかさに惹かれて図書館学の中心となるものを手ばなす危険をおかさないためには,読書の研究が唯一的に重要である。このことはテレビジョンの影響を調査するために政府が設置したTV調査委員会の勧告により,マス・コミニュケーション研究センターが設立され,学際研究が行なわれて,再確認されるようになったことからも裏書されている。
(小林 胖)
© 1973 三田図書館・情報学会© 1973 Mita Society for Library and Information Science
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