筆者は,文部省の招請により,日本の大学図書館を研究する目的で1973年6月に2週間滞日した。東京で数大学を訪問し,大阪および京都に短期間の旅行をしたが,この間,大学図書館員,学者,国立図書館員,図書館学教授,文部省行政官等と多く討論する機会を得た。
本報告では,前半において日本の大学図書館の諸問題について論じ,後半で大学図書館問題の背景について考究した。
大学図書館の問題点としては,まず,学部学生に対するサービス上の問題をとり上げ,学生用参考書,閲覧室,開館時間,図書館利用指導等の問題について論じ,次に,大学院学生および学究者に対するサービス上の問題点として,学部学科図書館,レファレンス・ライブラリアン,外国語専門家,主題専門家情報サービス,翻訳サービスの諸問題について論議している。大学図書館の経営管理上の問題としては,予算,図書選択,学部学科の図書館組織,図書館職員,相互協力,開架方式,年次報告,機械化等の問題について論議している。
大学図書館の諸問題の背景をなす問題として,全国的組織である文部省,国立国会図書館,日本図書館協会,医学図書館協会,日本科学技術情報センター,日本学術振興会,国際医学情報センター等について論じ,図書館学教育の問題にも言及している。
総合的調整と文部省の役割について,全国的図書館ドキュメンテーションシステムの必要性,外国雑誌を十分確保し全国的貸出図書館としての機能を有するような図書館の必要性,科学技術情報サービスのトータルシステム設定の必要性,図書館情報学教育の急速な向上等について総括的に論じ,文部省がこれらの実現に積極的な責任をとるべきことを示唆している。
以上の論議をまとめて,報告書の末尾に29項目の勧告がなされている。
(T. S.)
© 1974 三田図書館・情報学会© 1974 Mita Society for Library and Information Science
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