要素技術連関解析(ARATE)は,複数の要素技術からなる複合技術の構成と,要素技術間の関係を解明する手法である。本報告では,手法の基礎的な考えかた,農業(畜産と林業を含む)技術の特性,手法の農業技術への適用実験,および実験結果に基づく手法の有用性と今後検討すべき問題が述べられている。
人間社会で実用される技術は複合技術であって,複合技術とこれを構成する要素技術とは,システムとサブシステムとの関係と同様の関係にある。すなわち,要素技術はそれぞれ特有な機能を持ち,ひとつの要素技術は互いに異なった多くの複合技術の構成要素になり得る。農業において実用される多くの技術は,複合技術の典型的な例である。
ARATE を実用するにあたっての資料としては,対象技術分野における研究の課題とその研究計画が適当である。複合技術を分析するため,その分野を構成する要素技術,技術を適用する対象と適用した結果である事物,および技術適用の条件と場所を網羅した,多観点事後組合せ方式の分類表が必要である。この分類表を典拠として,資料に記載された課題の主題分析を行い,インデクスを付与してファイルを作成する。ファイルを加工して,解析に必要な各種の数値を算出する。
本報告における実験の資料は,日本の国立農業研究機関において1979年度に新に開始された,1,532件の研究課題とその計画である。分析の典拠として,農業技術分野に関して上記の性格を備えた十進法4ケタの分類表である,農学専門事項表示コードが作成使用された。実験の結果,農業技術全体,および特定の生物を対象とし,または,特定の場所で実用される農業技術において,これらを構成する小項目(3ケタ)レベルの要素技術,その種類数,ウエイト,および要素技術間の連関の疎密をあらわす数値が得られた。
実験によって,特定の技術分野に適用した場合の,ARATE の有効性があきらかになった。しかし,他の資料の利用や,細項目レベルでの解析などの検討が必要である。ARATE は,ドキュメンテーションの一手法である。しかし,従来のドキュメンテーションが,研究者個人に必要な文献情報の提供を主な使命としていたのに対して,本手法は,技術者養成のカリキュラムの立案や,研究開発管理に必要な情報を提供することがその主な機能である。
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