Library and Information Science

本稿は，1984年4月に開館した上智大学中央図書館における基本計画策定から完成までの経緯を明らかにするものである。

本図書館の建設プロジェクトは，基本計画（1975～78年）および建築計画の策定期（1979～81年），実際の建設期（1981～83年）に分けて考えることができ，前の二つに関しては，計画委員会と建設委員会における建設思想，方針，具体的な仕事の内容が記述されている。特に，建築計画策定に関しては，日米両国の建築事務所の合同作業のもとで立案された最初の建築計画が，極めて斬新で理想的なものであったにもかかわらず，建築基準，予算上の制約など種々の要因から大幅な変更を余儀無くされ，現在の形となった経緯が詳しく示されている。

また，建設にあたって維持費用の削減に関心が払われ，太陽エネルギーなど省資源化を可能とする試みがなされたこと，および出入口での盗難予防装置の設置，貸出業務の機械化のためのコンピュータの導入，目録業務の効率向上のためのUTLAS導入が図られたことなど，図書館建設における特徴的な側面が明らかにされている。

さらに本稿は，本図書館の規模を表わす具体的な各種のデータ，各階のレイアウト，平面図を示し，開館後の利用状況，目録利用上の問題点にも言及している。