科学技術の急速な進歩は,わが国の将来の発展に重大な影響を与えるものがあるが,一方,科学技術分野の情報量は年々増加しており,膨大な全科学技術情報の中から,研究者が必要とする特定の情報を選び出すことは,ますます困難になってきた。
わが国には,国立国会図書館があるが,科学技術情報のサービスについては不活発であり,日本科学技術情報センターは設立以来12年余になるが,いまだに科学技術の全領域に対してサービスを行ない得ないでいる。
このような状態の中で,国立の農学総合図書館設立の動きがあり,また,一方では日本医学図書館協会加盟館を結び,日本科学技術情報センターにメドラーズを導入して医学情報ネットワークを形成しようという考え方も発表された。
科学技術の全領域にわたる全国的な規模の文献情報サービスを行なうことを目的とする計画は今までにいくつか提出されてきたが,おおむね,現在の日本科学技術情報センターのサービスを拡大していって,科学技術の全領域にわたる文献情報サービスを行ないうるようなセンターに仕立てあげようという構想のものであった。
最近,科学技術会議で討議されている,科学技術情報の全国的流通システム(NIST)の構想は,システム・アプローチが多分にとり入れられたという点で,今までとはかなり異る点が認められるのであるが,この構想も日本科学技術情報センターの単なる拡大案として受取られるならば,問題は依然として今後に残されるであろう。
科学技術情報の流通システム,さらにその全国的ネットワークを推進するため,わが国で解決しなければならない幾多の問題を解決しつつ,一方で科学研究者,技術者から忌揮のない意見を広く徴する必要もある。本論においては,わが国の科学技術情報システムないしネットワークに関するこれまでの進展あるいは計画を述べると共にそれらを批判し,さらに新しい全国的ネットワークの構想に関する私見を述べた。
© 1969 三田図書館・情報学会© 1969 Mita Society for Library and Information Science
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