図書館内の飲食可否に関する実態調査
1 筑波大学大学院図書館情報メディア研究科図書館情報メディア専攻 ◇ 〒305-8550 茨城県つくば市春日一丁目2番地
2 筑波大学図書館情報メディア系 ◇ 〒305-8550 茨城県つくば市春日一丁目2番地
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【目的】近年,米国では“library as place(場所としての図書館)”という概念が広まり,利用者が長時間滞在しやすいよう飲食を許す図書館が現れている。一方,日本の多くの図書館では,従来館内飲食は許されないと言われてきた。だが,日本の館内飲食の現状や飲食許可による効果などは明らかにされていない。そこで本研究では,(1)日本の図書館における現在の飲食方針,(2)飲食による図書館資料への影響,(3)図書館利用者の館内飲食に対する反応,(4)図書館員の館内飲食に対する意見,(5)館内飲食許可の前後における図書館利用量の変化,を明らかにする。
【方法】本研究では,(a)アンケート調査,(b)図書館利用量分析,を行った。(a)アンケートは無作為抽出した公共・大学図書館各500館に2015年5~7月に送付し,それぞれ356館,329館から回答を得た。(b)図書館利用量分析では『日本の図書館:統計と名簿』から入手した来館者数,個人貸出総数,参考業務受付件数が,飲食を許した年の前後2年間ずつでどのような増加率を示しているかを調べた。
【結果】調査の結果,公共図書館の56.2%,大学図書館の62.3%が飲み物または食べ物の利用を許していることが明らかとなった。また,館内飲食に付随する問題として取り上げられる資料への汚れに関しては,飲食を許した後に汚れが「目立つ」「少し目立つ」と回答した公共図書館は4.0%,大学図書館は14.6%と比較的低い割合であることがわかった。さらに,飲み物を許した公共図書館の来館者数の増加率の平均値は+65.7%であり,全国の平均値+8.6%より有意水準0.05で高いことや,食べ物を許した公共図書館の個人貸出総数の増加率の中央値は+56.5%であり,全国の中央値+4.1%より有意水準0.01で高いことなども示された。因果関係の証明などは難しいものの,飲食許可後は来館者数や個人貸出総数が増加する傾向があり,館内飲食は図書館利用量向上に有効なサービスである可能性が示された。
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