Library and Information Science

Library and Information Science ISSN: 2435-8495
三田図書館・情報学会 Mita Society for Library and Information Science
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Library and Information Science 9: 153-160 (1971)
doi:10.46895/lis.9.153

原著論文Original Article

60年代における米国の学術図書館Reflections on academic libraries in the United States in the sixties

発行日:1971年9月1日Published: September 1, 1971
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60年代の学術図書館は,援助の増大と高度成長によって特徴づけられよう。1963年の高等教育施設法は大学図書館建設ブームを招いた。67年から69年までの3年間に新築・ 増築・改築された大学図書館の数は210館に及び,その費用は4億3千6百万ドルに達した。HarvardのLamont図書館が先鞭をつけた学部学生用図書館の分離が,このブームのお陰で数多くの大学で実現を見,高校図書館と研究図書館の懸け橋の役割を演じ,学部における教授法にも変化をもたらした。この建築ブームも,60年代の終りには政府の援助が削減されるにつれ,急激にしぼんでしまった。1965年の高等教育法による補助金は,学術図書館の図書購入費と蔵書数の急激な増加を招いた。蔵書数は16年間で倍加するといわれていたが,学術図書館全体の蔵書は,1億7千6百万冊から3億2千4百万冊へと,60年代の10年間でほぼ倍増した。補助金の総額は3年間で7千万ドルに及んでいる。

60年代の学術図書館に大きな変革をもたらしたものにコンピュータがある。それは原爆にも等しい威力をもって学術図書館界を席巻した。あるものは,図書館は一夜にしてコンソールとプリンターにとって代られるであろうと信じ,あるものは,自分の失職や無用の長物化を恐れた。過大な期待と恐怖の渦の中で,コンピュータは幾つかの顕著な貢献を示した。MARC配布サービスや,目録情報,逐次刊行物所在情報の全国的データ・バンクなどがそれであり,また個々の図書館においては,貸出,収書,逐次刊行物管理などの業務にコンピュータが利用され,その処理能率を著るしく高めた。

60年代の後期に,大学は学生騒動の嵐に見舞われ,多くの図書館が直接の被害をこうむった。学生問題対策の一つとして,多くの大学が十分な用意もないままに開館時間を延長し,サービスの質を低下させた。民主化は図書館評議会にあらゆる利用者層の代表を参加させ,ために評議会は巨大化し,その機能を喪失するに至った。

ある人は60年代を“振子の時代”と表現した。図書館に対する財政援助は次第に高まりを見せ,そしてまた衰弱した。とはいえ,60年代に図書館が消費した金額は前年代に比し251.65%の増加を示している。図書館はビッグ・ビジネスと化し,ライブラリー・スクールを卒業しただけでは,もはやその運営の任に堪えられなくなった。60年代はライブラリアンシップの一時代の終焉と,別の時代の始まりを告げたといえよう。

もともと学術図書館は伝統的・保守的な企業であり,30年代から50年代にかけては,さしたる変化は見られなかった。その平穏は60年代の初期まで続いた。しかしながら,60年代の後半は,ある人によれば,建設に始まって混乱に終った。誰しも何が起るかを予想しえず,また予想した事は予定どおりには起らなかった。不遜な反応が許されるならば,それは“忌わしい時代”であった。

(I. A.)

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