USIS(米国大使館広報文化局)は世界の83か国に200余りの図書館をもっている。毎年推計約23,000,000人の人々が200万冊近い蔵書を利用するためにこれらの図書館を訪れる。日本のUSIS図書館はアメリカ文化センター,通称ACCの中に置かれている。ACC図書館は現在東京,大阪,京都,福岡,札幌,広島,新潟および仙台にある。ACCはその図書館を通して,米国の諸相についての基本的資料や情報を主として英語で提供する。しかし蔵書の1割は日本語である。ACC図書館は東京の25,000冊から仙台の2000冊というようにその規模は一様でない。ACC図書館では日本人の職員が働いていて,それを米人の館長が統轄する。各館長は東京のUSISに報告する。
米国大使館,USISの役人,在日アメリカ文化センターは物理的には別個のものであるが,米国公務員という立場としては職階的につながっている。
日本ではACC図書館の役割をきめるのはUSISの局長の責任である。ACCの所長はUSISの計画を各担当の地域で遂行する。ACCの図書館活動は,日米の文化情報交換の諸活動の中の一分野にすぎないし,予算も限られているので,図書館の蔵書は米国に関する著作と,広く一般に読まれる米国の著者の作品に限られている。ACC図書館は元来人文・社会科学の資料を中心とし,あらゆる人のあらゆる要求にこたえる意図はもっていないが,このことはこれまで充分理解されていなかった。
どのような種類の図書館であれ,日本に図書館を存在させるということは何故米国の国家的関心事であるのかという疑問はくりかえし問われるが,これに対する一つの答は日本自身に要求,希望があるということである。しかし日本の情報要求は急激に変化しているのに,ACC図書館はそれを充分理解していない。ACC図書館は米国の公共図書館のサービス水準を維持してきたが,日本の指導的立場の人々にサービスすると同時に一般大衆にも奉仕するという二重の役割を果すということは矛盾するし困難である。
米国大使館広報文化局は ACC図書館が効果的なサービスを行なうため,蔵書の量と質,職員の長所と弱点,活動,施設の近代化等について徹底的な調査を行なっている。調査の結果から得た勧告の多くはすでに実行に移されている。ACC図書館は全体としてみると図書館間の協力体制のととのった重要なネットワークである。しかし研究に必要な印刷資料その他の新しい情報伝達媒体をもっと広く効果的に利用者に提供することは更に努力を必要とする分野である。
最近行なったUSIS,ACCの利用者調査および米国政府出版物をマイクロフィッシュ化した場合の需要調査について述べ,調査結果の分析を示している。
ACC図書館は過去において模範的公共図書館の例として成功をおさめたが,1970年代の現在では,あらゆる人々のための図書館でなく,特定の指導的役割を果す人々に対してよりよいサービスを行なうことに性格がかわったので,一部の利用者はとまどっているようである。しかし特定の利用者の要求に直接こたえるのみでなく,活動計画や施設,機能等にも弾力性が必要で,新しいシステムに対する急激な変化も適宜制御できるものでなければならない。今後日本人に対して現代世界の中の米国についての情報を提供するという重大な役割を果すには,1970年代の日本のUSIS図書館の問題に対して強力な専門家の指導力が一つの重要な鍵となるであろう。
(I. H.)
© 1971 三田図書館・情報学会© 1971 Mita Society for Library and Information Science
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