大学の図書館資料も,学生や教員の数も増加してきている現在,より大規模な大学図国館が要求されるようになった。同時に図書や雑誌も高価になり,その整理やサービスに必要な人件費も高騰している。教授も学生も図書館を無料の資料源と見倣す傾向があるが,その考え方はもはや当てはまらない。図書館も他の大学のサービスと同様に一般予算で賄われるのであるから,効果的に経済的にサービスをしなければならない。
図書館の利用は本質的には数量の問題ではない。しかし,予算が許す限り,すべての図書を購入したいという誘惑に駆られる。保管費は増大する一方なのでこれでは破産してしまう。最小の費用で最大のサービスを行ない,実効のある技術を駆使して蔵書の膨張を最小限に食い止めるには,大学当局や教授陣がこの点をよく理解し協力して初めて可能なことである。
今日米国には,ほとんど利用されない沢山の蔵書が大学図書館で眠っているが,これは長期計画によって優先順位を考えずに,教授の個人的興味に従って図書を購入した結果である。知性のある図書館サービスをまず優先的に考える必要がある。また必要とする資料を見出すための書誌的資料を充実することはその次に必要であろう。継続的研究に余り役立たない稀観本の収集で他の図書館と競合する必要はない。蔵書を永持ちさせることを図書館に期待したいが,これには種々のマイクロ化の技術が必要であろう。またある分野ではコンピュータの利用も重要になろう。しかし,図書館間の協力をおしすすめ,単なる相互貸借に留まらず,収書,交換,共同保管など積極的サービスを行なう必要がある。
最大の難事は大学の究極目標を決定することであるが,カリキュラムや教授の任用と図書館の問題は深い関わりのある問題である。長期計画でない研究分野の場合には研究する教員に資料費を与えて個人資料としてしまったほうが長期的にみて経費の節約になりうることも考えられる。図書館の資料収集の基本方針を定めることが可能になるような大学の長期計画を樹立することを大抵の教員は望まないが,このような考え方は変っていくべきであるし,個々の大学の関心をもつ研究分野がいたずらに拡散するのをある程度抑制しなければ,図書館の問題は年とともに手に負えなくなるだろう。
(T. S.)
© 1971 三田図書館・情報学会© 1971 Mita Society for Library and Information Science
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