まず,青少年に対する図書館活動の諸問題を論ずる前に,青少年を意味する用語の定義を行なっている。“adolescent”は,図書館活動の分野でよりも,心理学その他の研究部門で青少年を意味するのに適した用語であり,また,一般的に使用される“teen-ager”は十代前半のlow-teenを意味し,17才程度のhigh-teenは“teen-ager”と呼ばれることを喜ばない。従って,“young adult”という用語が最も包括的である。つまり,年令的にもteen-ager全体を含むと同時に,“student”以外の青少年をも含みうるという点に於て,最も図書館活動に適した用語である。以上の如く定義された青少年に対する公共図書館活動の意義と問題点について,日本における適用を考慮しつつ,アメリカにおける現状を報告したものである。
アメリカに於て,青少年人口の増加は近年著しいものがあり,1965年度末までの全人口の約半数が25才以下の年令層によって占められる。それと同時に,知識の領域の拡大は史上稀にみるものであり,今日の青少年は学習,教養,娯楽の面でも多くの問題をかかえている。
更に,社会の急激な変化があらゆる意味で青少年に過重な経験を強要し,前世紀の青少年と比較にならない程の人間的均衡と,判断力と,意欲を,今日の青少年は必要とするに至っている。
このような時代に於て,公共図書館は青少年に対して何をなすべきか。まず,読書の強制でなく,選択の機会を与えること。特に生涯の方針を決定する重要な時期であるために,客観性のあるfactを豊富に供給することが重要である。そして,その中からものの価値を見出す機会を与えるべきである。そのためには,図書館資料も“青少年用”のラベルを貼って,内容を限定すべきではなく,より融通性のある資料の配置及び取り扱いが望ましい。
また,図書館の専門職員については,児童図書館員が特殊な専門性を持つと同様,young adultsを対象とする図書館員の専門的訓練が必要である。特に,成人図書の中から青少年に適した図書を選択する原則とその方法を専門的知識に加えなければならない。
アメリカに於ては,young adultsに対する公共図書館活動はすでに40年の歴史を持つが,多くの失敗もあった。例えば,成人用図書の中に,星印その他で青少年向きの本を区別した場合,逆に青少年がそのマークされた図書を避けて他の成人図書を手にとるとか,或いは,児童室に隣接した青少年室は全く利用されなかったなど。また,独立した青少年部門が年とともに無用の長物化した例などもある。
このような失敗から得られた教訓は,独立した部屋やぜいたくな環境が必要なのではなく,青少年の要求と,それをみたす資料に関する知識を備えた図書館員の存在が最も重要であるということであった。
また,公共図書館が活動の方針決定や利用者の習性把握について独善的であったのも,重要な欠陥の一つである。つまり,社会学者,心理学者,教育学者など,他の研究分野の専門家たちの見解をより積極的にとりいれるべきである。
今日,young adultsに対する専門図書館員の必要性は,充分に認識されるようになってきた。しかしながら,その要求をみたすことのできる専門家が量的に教育されているわけではなく,むしろ,不足が痛感されているとすれば,その要求をみたすためには図書館学校における,この種の専門図書館員養成の長期計画が必要である。と同時に,すべての公共図書館に於て,館員の少くとも一人はyoung adultsを対象とする活動に専念できるようなin-service trainingと人員の配置が行なわれなければならない。
更に,成人利用者の中で大きな比重を占めるyoung adultsが利用する資料の選択のtoolが,より多く,より適切に,しかも頻繁に作られることが必要となる。
(S. W.)
© 1965 三田図書館学会© 1965 Mita Society of Library Science
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