コミュニケーションの革命的な発展及び人口の急増に伴ない,アメリカの社会生活は急激な変化を示しつつあり,その影響は,当然,教育にも現われてきている。然しながら,その影響の様相は均一的ではなく,地方により大きな落差が認められる。学校図書館発展の様相も地方によって異なり,一方に於てはALAの基準に基づく州基準を施行している州もあれば,それを遙かに下廻る基準もある。
合衆国全域の小学校の66%は依然として独立の学校図書館を持たず,それに反し,中高校のレベルに於ては98%以上の普及率を示している。しかし,その内容には大きな優劣が認められる。つまり,team teachingなどの新教育技術を積極的にとりいれている学校に於ては,学校図書館も資料センターとしての充実を示していることは注目に価する。その他,“block program”,“core program”,“外国語教育”,“科学教育”などの導入及び強化が,資料面についても,サービス面についても学校図書館に大きな変革を迫っている。また小学校レベルに於ては,第3学年までの進級を画一的なものとせず,個々の児童の課題別の進度に応じた教育方法などもとりいれられている。
このような教育技術の変革のため,コミュニケーションのメディアが従来の教科書及びその他の図書に加えて,非図書的なメディアが大巾に使用されるようになってきた。
この論文の筆者を中心として行なわれた472校の小・中・高校図書館を対象とするU.S. Othce of Educationの全国調査によれば,教材と視聴覚資料の二つの大きなグループに分けて,実に58種類の学校図書館資料があげられている。従って,施設,設備の面でも大巾な拡充が必要とされ,中・高校レベルに於ては,独立建物の学校図書館が増加しつつある。前記の調査によれば,この新傾向の学校図書館の建物には24のユニットが含まれている。つまり,24種の機能を果すためにデザインされたスペースを含めているのである。
また,この調査によれば,各地に於て,新教育技術及び新しいタイプの教材に関する研修会,講習会が,教師及び学校図書館員の両者を対象として盛んに行なわれている。このような講習は,地区毎の教材センターの指導者によって行なわれる例が多い。この他地区別の教材センターは,個々の学校図書館へ資料を供給するのみならず,専門家による助言及び指導を与えている。また,資料の選択から目録作成までの技術的処理を,このセンターが集中的に行なう例が多い。視聴覚資料に関しては,比較的コストの低いものは個々の学校図書館へ長期貸出しの形式をとり,高価且つ専門的な保管技術を要する器材はセンターが集中管理して調整されたスケジュールにより,個々の学校の利用に供している。
公共図書館の学生による利用の激増が一つの問題になりつつあるが,解決の一方策として,学校図書館の職員増加により,夜間開館,土曜日の終日開館,休暇中の開館を行なうことなどが新しい動向であり,また,それは公共図書館と学校図書館間の連絡調整の成果であるともいえる。
(S. W.)
© 1965 三田図書館学会© 1965 Mita Society of Library Science
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