Library and Information Science

Library and Information Science ISSN: 2435-8495
三田図書館・情報学会 Mita Society for Library and Information Science
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Library Science 3: 9-17 (1965)
doi:10.46895/ls.3.9

原著論文Original Article

科学ドキュメンタリストの教育についてSome thoughts on the education of science documentalists

発行日:1965年7月1日Published: July 1, 1965
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はじめに「科学ドキュメンタリスト」とは何であるかを定義し,更にこれに関連して「専門図書館員」は「科学ドキュメンタリスト」に比べてどのような点が相違し,またどのような点が同じかを論じた上で,本文では両者を含めて一般的に科学情報を取り扱う者の資質に関する問題を取り上げた。

【素質】科学情報担当者も,すぐれた素質が要求されることは,他の知的専門職における場合と同様である。

【一般教育】他の専門職と同様,科学情報担当者も専門職教育以前の大学一般教育の質,広さ,深さに左右されることが大きい。更に専攻ないしは副専攻として自然科学系の学問を修めることは不可欠であろう。しかしこれは自然科学系の科目の主題知識を獲得することが一番重要なのではなく,これらを通して科学的な考え方,実験技術,科学的な問題解決法,科学的正確さの必要な理由,科学的誤謬の原因等を理解することに意義がある。

一般的に学部課程の外国語は初歩的であり,科学文献の翻訳には更に一層の勉強が必要であるが,その程度でも文献探索には十分と考えられる。また世界中の科学文献の約半分は英語で書かれ,あとの大部分は独,仏,露,日,伊,中国,和蘭,西班牙語で書かれている。このことは,科学者と同様,科学文献翻訳者もまず科学英語が判り,程度の差はあれ,その他の外国語を理解出来なければならないことを意味する。

【専門職教育】科学情報担当者の専門職教育の基準を1つにすることは,それ以前の教育や経験があまりにも多岐に亘るので不可能である。科学情報教育の課程が極端に高度になり特殊化されると,雇用者側にとっては卒業生の一般的有用性が減じてしまう傾向が生じ,学生にとっては就職先の選択,変更の機会が減り,専門職としての見透しが限定されてしまうことになる。自然科学の主題知識にのみ重点を置けば,その学生は情報機関における有用性を減ずることになる。科学文献ないし科学情報教育課程を修めたものが,科学技術の分野の大学院課程を履修することは非常に有益である。しかし,科学それ自体の教育のみで,科学文献・科学情報の教育をおろそかにしては,最善の科学情報担当者は得られない。

科学情報業務の中には事務的なものも多く入っているので,科学ドキュメンタリストは,部下を監督訓練する必要上,必要な事務的業務も知っていなければならない。事務的なものに対して専門職業務と呼ばれるものは,情報源の同定・発見,情報の捜査・評価・選定,ナマの情報および情報源としての資料の分類・目録・索引作成,書誌的探索,再抽出された情報の抄録・注解・解釈,経営管理・研究方法の確立・システム分析などである。

翻訳には語学知識が必要であり,プログラミング,コーディング等には電子計算機の知識が必要であるが,これらは科学情報教育課程外で習得することが出来る。抄録,情報解釈に科学分野の知識が役立つけれども,科学文献を取扱ううちに現場教育によっても十分な知識を授けうる。索引作成は抄録ほど主題知識を必要としないことが判っている。

【科学情報専門職教育課程】次のような分野が科学専門職教育課程とも言うべきものである。1)情報機関―経営管理,2)情報コレクション―情報源,情報資料など,3)情報処理―主題分析,転換原理など,4)情報再抽出―書誌的探索,主題分析など,5)選択科目として,外国語,言語学,自然科学系科目,サイバネティックス,人間関係論。現在このようなまとまった科学情報専門職教育課程はどこにも設けられていないが,部分的には各所に見られるものである。

【訓練,経験,教育,日本のための示唆】大学院で専門職教育を受けないで,現職訓練や独学によってすぐれた情報担当者が作られることは事実であるが,いかにすぐれた訓練,経験,独学によっても,それだけでは大学院課程で与えられるような基本的な理念,専門家としての広い視野,創造的知性,資料情報源に関する鋭い感覚や適正な知識を身につけることは出来ない。

終身雇用制度や科学情報教育課程の現在の窮状を考えると,日本では図書館の協会,諸大学,図書館学科,専門図書館,科学情報センター,国公私立の科学研究機関など,すべて科学情報専門職教育に熱意を有するものが力を合わせる以外に打開の道はないと思われる。日本としては,次のような方策が可能ではなかろうか。1)現在の図書館学科を強化拡充し,大学院課程に発展させ,前述のような課程を発展させる。2)全く新たに,この線に沿った大学院課程を新設する。3)図書館学科のコースの一部と専門図書館,情報センターにおける実習とを合わせて科学情報担当者に適した2~3年間の特別課程を設ける。4)上記3)の如き特別課程に専門職短期講習,図書館学科セミナーを組合わせる。5)外国の大学院課程に留学させ,卒業後,帰国前にすぐれた専門図書館,情報センターで実習経験を積ませる。6)現在の図書館学科ないし科学系の教員を外国の大学院課程に留学させ,経験を積んで帰国してから,上記1)または2)の大学院課程の教員に任命する。

(T. S.)

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