明治期に於ける公共図書館の発展については,竹林熊彦「近世日本文庫史」,小野則秋「日本図書館史」,武居権内「日本図書館学史序説」等の我国の図書館史に関する基本的な著作にくわしく紹介され,また,近くは,小倉親雄“パブリック・ライブラリーの思想とわが国の公共図書館”の論文などがある。更に,個々の図書館の研究調査による夫々の図書館史は,必ずといってもよいほど,明治期における創設の経緯に触れている。また,当時における館報や図書館案内,或いは,文部省の調査報告等研究資料として有用なものも少くない。
このような資料によって,明治期に於ける公共図書館の発展の推移を探求することは,国内に於ては,それ程困難な作業ではなく,また,今後の研究課題としても尚多くの興味ある問題を含んでいる。
然しながら,海外の図書乱人及び図書館学研究者にとっては,日本の図書館史は依然としてその大部分が未知の領域であり,直接手にしうる文献は稀少である。また,時期的にも,明治開国百年を迎えて,日本文化の再評価が国外に於て盛んになりつつある折から,明治期に於ける日本の公共図書館事情を紹介することも一つの意義あることと考えてこの論文をまとめた次第である。
内容はⅠ.明治文化の先駆者による外国図書館事情の紹介,Ⅱ.明治初期の教育的背景,Ⅲ.京都の集書院,Ⅳ.書籍館より東京図書館,Ⅴ.地方に於ける公共図書館の発展,Ⅵ.図書館令の6章である。
わが国の図書館事情に不案内の外国の研究者に理解できるよう,社会的背景,時代感覚などに触れ,また,図書館規則などについても,可能な限り一次資料を参考として具体例を取上げたつもりである。
© 1966 三田図書館学会© 1966 Mita Society of Library Science
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