Library and Information Science

Library and Information Science ISSN: 2435-8495
三田図書館・情報学会 Mita Society for Library and Information Science
〒108‒8345 東京都港区三田2‒15‒45 慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻内 c/o Keio University, 2-15-45 Mita, Minato-ku, Tokyo 108-8345, Japan
https://mslis.jp/ E-mail:mita-slis@ml.keio.jp
Library and Information Science 89: 1-23 (2023)
doi:10.46895/lis.89.1

原著論文Original Article

日本の公共図書館における高齢者サービス研究の変遷と課題高齢者を取り巻く社会的動向を踏まえてChanges and Challenges in Research on Japanese Public Library Services for Older Adults in the Context of the Social Trends Surrounding This Group

慶應義塾大学大学院Graduate School of Letters, Keio University ◇ 〒108–8345 東京都港区三田2–15–45 ◇ 2–15–45 Mita, Minato-ku, Tokyo 108–8345, Japan

受付日:2022年6月30日Received: June 30, 2022
受理日:2023年1月13日Accepted: January 13, 2023
発行日:2023年6月30日Published: June 30, 2023
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目的】本稿は,日本の公共図書館における高齢者サービスに関する研究の時期ごとの特徴とその変遷を,高齢者を取り巻く社会的動向と結びつけながら把握し,今後の課題を明らかにすることを目的とする。

方法】まず,高度経済成長期から現在までの日本における高齢者をめぐる社会的動向を文献・ウェブ調査によって明らかにした。用いた主な資料は,厚生労働省や文部科学省が取り組む政策に関するものや,老年学分野の研究成果などである。次に,CiNii Articles, 『図書館情報学文献目録』,カレントアウェアネス・ポータル及び『図書館情報学研究文献要覧』から抽出した168件の文献に焦点をあて,前述の社会的動向と結びつけて,公共図書館における高齢者サービス研究の特徴と変遷について考察した。

結果】分析の結果,日本の公共図書館における高齢者サービス研究が「第I期:高齢者に対する意識の萌芽」,「第II期:サービスの模索の開始」,「第III期:独立した利用者カテゴリーへの移行」,「第IV期:高齢者への認識の深化及び対策の多様化」, 「第V期:認知症への注目及び連携に向けた模索」に分けられ,時期ごとに違いが見られるが,高齢者をめぐる社会的動向は多くの場合,タイミングよく図書館・情報学の研究に反映されていることが明らかとなった。さらに,今後の高齢者サービス研究における重要な課題として,高齢者の実態の把握を継続的に行うことと,多様な視点からサービスの議論を行うことの2点が存在することが導き出された。

Purpose: This paper aimed to understand the characteristics of and changes in research on Japanese public library services for older adults over time, as well as to identify future research directions, in relation to the social trends surrounding this demographic.

Methods: First, literature and web surveys were employed to research and clarify the social trends surrounding older adults in Japan, from the period of rapid economic growth to the present. Policy documents of the Ministry of Health, Labour and Welfare (MHLW) and Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT), as well as gerontology research results, were the main texts used. Next, focusing on 168 references extracted from CiNii, BIBLIS PLUS, the Current Awareness Portal, and the Bibliography of Library and Information Science, the characteristics and changes in research on services for older adults in public libraries were discussed in relation to the related social trends.

Results: The analysis revealed that research on services for this population in Japanese public libraries can be divided into five phases: Phase I: emerging awareness of older adults; Phase II: beginning of the search for services; Phase III: transitioning to an independent user category; Phase IV: deepening awareness of this population and diversification of services; and Phase V: focusing on dementia and strengthening cooperation. Although there are some differences among the phases, it is clear that public library research on older adults has followed specific social trends in many cases. Finally, two important issues were identified for future research: the continuous recognition of the actual situation of older adults and the discussion of services from diverse perspectives.

I. はじめに

現在,高齢化は世界規模で急速に進展している。長期間,世界一高い高齢化率が続いている日本は,1970年に高齢化率が人口統計史上初めて7%を超えた1)。7%という水準を超えると高齢化率は急速に上昇していくことが,人口転換過程の研究から明らかにされており,1970年前後が日本の人口高齢化の始まった時期であるとみられている2)。こうした背景から,日本の公共図書館は1970年代から利用者として高齢者に注目し始め,これまでに様々な知見が蓄積されてきた。

1970年代以後,高齢化率は急激に上昇し,1994年に高齢社会の基準となる14%を,2007年に超高齢社会の基準となる21%を超えた1)。2021年現在,65歳以上の人口は3,621万人となり,総人口に占める割合が28.9%となった。今後,高齢化率は上昇を続け,2065年には38.4%に達し,日本人の約2.6人に1人が65歳以上となると推計されている。そのうち,後期高齢者(75歳以上)の割合は,2019年に初めて前期高齢者(65歳~74歳)を上回って以後,増加の一途を辿り,2065年には25.5%となり,約3.9人に1人が75歳以上となると見込まれている3)。高齢者の比率が高まる一方で,高齢者の約8割が「健康」であるというデータが示されている4)。65歳以上になったとはいえ,まだ身体や認知機能は衰えず活発である人は多く,定年の延長・撤廃や年金受給開始年齢の調整も絡んで,高齢者の定義を見直す動きが見られた5)。高齢化の始まった時期以来の,人口動態や高齢者像の変化,高齢者に関する施策の展開等から受けた影響により,ここ数十年間に日本の高齢者をめぐる様相は急激に変化している。

こうした背景の中,国立国会図書館が2020年に実施した調査6)によると,図書館利用者のうち60代以上が42%を占めていることが示された。地域社会を支える重要な機関として位置付けられる公共図書館にとって,高齢者をどう扱うかという問題が身近に迫ってきている。近年,超高齢社会における図書館サービスの再考が喫緊の課題であることが先行研究でしばしば言及されるようになっている7)。そこで,公共図書館における高齢者サービスの発展の経緯を適切に把握することは,将来の発展のために必要なことと考えられる。

これまでの先行研究では,公共図書館の高齢者サービスについて,その歴史的変化に注目したり,高齢者サービスの発展を社会状況と関連づけて議論したりするものがわずかながら存在する。2012年に出版された『高齢社会につなぐ図書館の役割:高齢者の知的欲求と余暇を受け入れる試み』8)の1章では,超高齢社会に突入する直前の日本の社会状況及び高齢者像を概観した上で,日本における生涯学習の発展について整理を行い,公共図書館に求められる新たな役割をまとめている。また,2017年に国立国会図書館から出されている『図書館調査研究レポートNo.16:超高齢社会と図書館:生きがいづくりから認知症支援まで』7)も代表例として挙げられる。同報告書の3章では,図書館サービスにおける高齢者の位置づけの変遷に着目し,高齢者の扱い方を「障害者サービスの中の高齢者」と「一つの利用者カテゴリーとしての高齢者」の2段階に分け,それぞれの段階におけるサービスの様相を図書館施策及び高齢者教育の主要な動向に結びつけて論じている。

一方,高齢者サービスは,そうした図書館施策や高齢者教育の発展のみならず,高齢者の生活に最も直結する社会福祉分野の動きや老年学研究の発展などの影響も受けていることが考えられる。したがってそのような高齢者に関わる社会や研究の動向をあらためて捉え,図書館における高齢者サービスの過去の推移と関連づけることは,高齢者サービスの置かれた文脈の理解に役立ち,今後のサービスの在り方に示唆を与える可能性があると考えられる。しかし,これまでに,高齢者を取り巻く社会的環境を包括的に視野に入れながら,高齢者サービスの出現から現在までを扱ったり,その議論を網羅的に取り上げたりする例はほとんど見当たらない。

そこで本稿は,日本における高齢者をめぐる社会的動向と関係づけながら,公共図書館の高齢者サービスに関わる研究の時期ごとの特徴とその変遷を把握するとともに,将来の課題を明らかにすることを目的とする。具体的には,高度経済成長期からの人口動態,高齢者に関する施策の展開,高齢者像の変遷,及び老年学研究の発展,という側面を高齢者に関わる社会的動向として捉え,それらの内容を包括的に考察した上で,「公共図書館における高齢者サービス」を扱った文献を対象として調査と分析を行い,これまで日本においてなされてきた議論の特徴とその変遷を明らかにする。さらに,それらの議論をもとに,公共図書館における高齢者をめぐる研究の課題を検討し,今後の研究を展望する。

II. 日本の高齢者を取り巻く社会的動向

日本の高齢者をめぐる社会的動向を総合的に捉えるために,高齢者全体を対象とする福祉の基本法である「老人福祉法」が制定された1960年代から現在までの,高齢化率の進行具合(人口動態)や,高齢者に関わる代表的な政府の施策及び関連事項を文献・ウェブ調査によって収集し,年表(第1図)を作成した。年表に基づき,高齢化率のマイルストーンや,高齢者政策の転換点等の要素,並びにそれらに関連の深い老年学に由来する概念等を包括的に考えた上で,ある程度の整合性が見られた期間をそれぞれ一つの時期としてまとめた。結果として,高齢者を取り巻く環境は社会的動向の観点から,次の4つの時期,A. 1960年代~1970年代半ば,B. 1970年代半ば~1980年代末,C. 1990年代~2000年代半ば,D. 2000年代半ば以後,に区分できることがわかった。以下では,それぞれの時期を検討していく。

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第1図 高齢化と関連の出来事および法令・施策の対照年表

A. 1960年代~1970年代半ば

1960年代,日本が高度経済成長してゆく過程において,高齢者を取り巻く環境に様々な変化が生じてきた。若年層を中心とした人口の都市集中,核家族化,女性の社会進出等の要因が絡み,家庭内の互助機能が低下し,従来,家族の責任とされた高齢者の扶養が困難となってきた9)

こうした背景から,生活困窮対策が中心であった戦後復興期の一時的な施策10)からの転換がはかられ,1963年に高齢者全体を対象とした「老人福祉法」が制定された。この法律は,高齢者の課題が社会的課題となってきたことを受け,“老人の福祉に関する原理を明らかにするとともに,老人に対し,その心身の健康保持及び生活の安定のために必要な措置を講じ,もつて老人の福祉を図ること”11)[p. 80]を目的としていた。内容として,高齢者医療費の支給や健康診断,老人ホームへの入所,老人家庭奉仕員等の措置が挙げられたが,実際に予算措置の大部分を占めたのは「老人ホームへの入所」に関する事業であったため,老人福祉法の制定をもって“1980年代までの施設整備を中心とした高齢者福祉施策の路線を開いた”12)[p. 50]ともいえる。また,1968年に,全国社会福祉協議会は「居宅ねたきり老人実態調査」を発表したことを契機として,「寝たきり老人」が社会問題となり,脳卒中などの医療対策と介護問題が課題となってきた9)。さらに,日本は正式に高齢化社会(高齢化率7%を超過)を迎えた1970年に,中央社会福祉審議会は年金,医療,就労,住宅,福祉サービスを縦断した「総合的老後対策計画」の必要性に言及する一方で,寝たきり老人のための施設などを整備することが緊急に必要であることを示した13, 14)。以後,同会は「老人ホームのあり方に関する中間意見」で,老人ホームを「収容の場」から「生活の場」へと高める必要性をも指摘した15)。また,高齢者の医療費負担を軽減するため,老人福祉法の一部を改正し,70歳以上の老人医療費を無料とする画期的な措置「老人医療費支給制度」が1973年から行われてきた9)。成清美治らはこの時期の高齢者施策について,次のように述べている。

特別養護老人ホームの急ピッチの整備は,日本が高齢化社会への仲間入りをはたし,高齢者数の増加と「寝たきり老人」問題,当時,作家の有吉佐和子が「恍惚の人」と称した認知症高齢者問題など,要介護高齢者に対する社会的対策が注目され始めた時期と軌を一にしている12)[p. 50]。

このように,高度経済成長を背景に高齢者福祉が拡充を続ける中,高齢者が豊かな生活を享受しうる条件が急速に整備されはじめた。しかし一方で,それは高齢者に対し,「弱者」として必要な援助を行う事業を進めることにもなり,従来の日本の敬老思想を反転し,福祉に頼る「弱い」イメージへと高齢者像を移行させる役割をも果たしていたとされる16)

副田義也17)は,1960年代以降に家制度が衰退するなかで,高齢者の経験や知識を強調する敬老思想が「タテマエ」となり,生産性を失った高齢者の無能力や弱さを強調する否定的な態度こそが「ホンネ」としての高齢者観であると主張する。一方,安川悦子18)は,1960年代中期から1970年代の移行期の資本主義経済システムのなかで,国家は「無能」で「効率の悪い」「国家の厄介者」であるという高齢者に対するマイナスのイメージを広く社会に伝播していったと述べている。また,久保田治助19)は,1960年代後半に至って,高齢者は戦前期に彼らに求められていた国家及び社会における「長老」としての役割を完全に喪失した代わりに,福祉政策の対象者として積極的に「弱者」の役割を担うことを国家及び社会が求めるようになった,と論じている。

他方で,医学における老年学の進展と合まって,病気にかかり障害を持つ高齢者の状況が明らかにされはじめた。この時期の老年学には“主として,身体的,しかも局所の変化に向けられていたこと”,“(研究者が)病気や障害を持つ人の治療やケアをする立場にある専門家に限られていたこと”,“加齢変化を正しく捉えるための縦断研究の成果がまだ結実していなかったこと”20)[p. 12]などの特徴がみられる。これらの研究の進展とともに,高齢者の慢性病や心身の健康障害が広く知られるようになり,こうした病気や障害と結びつけた高齢者像が肥大化されるようになった18)

B. 1970年代半ば~1980年代末

中東戦争によるオイルショック後,日本政府は財政状況の悪化への対応を迫られた。経済成長率が低下するなか,特に高齢者の自由な医療機関への受診による医療費の急増に対する懸念が広がり,その対応が政策課題として挙げられた。そのため,1980年代は一転して財政削減による福祉の見直しが展開されることとなった12)

まず,1982年に「老人保健法」が制定された。同法は,高齢者の医療費について少額の自己負担を定めるものであり,これにより1973年に始まる「老人医療費無料化」の時代が終わりを迎えることとなった21)。さらに1980年代後半になると,福祉や保健医療施策に重要な制度が次々と実行されてきた。1986年,今後の高齢化社会への社会的対応のための基本的考えを示した「長寿社会対策大綱」22)が閣議決定され,その中では,経済社会の活性化を図り,活力ある長寿社会を築くことが第一方針とされ,そのための個人の自助努力,家庭や地域社会の役割重視,民間活力の活用が強調された12)。この大綱を具体化するため,2年後の1988年には「長寿・社会福祉を実現するための施策の基本的考え方と目標について」23)という「福祉ビジョン」が出され,従来の保護や援助の対象である高齢者像から社会に貢献し得る自立した高齢者像を目指すことが決定された12)。1989年,厚生省によって「高齢者保健福祉推進十か年戦略(ゴールドプラン)」24)が策定され,日本の高齢者保健福祉の基本方策に対して数値目標が出された。

このように,1970年代後期から80年代末の時期において,政府は高齢者福祉施策の見直しと整備を進めていた。一方,高度経済成長期に定着した「社会的弱者」としての高齢者像は,前述の政策の文言にもみられるように,「自立」という方向へ少しずつ転換を見せていた。この変化は,国内の状況からだけではなく,国際的動向からも大きく影響を受けていた。

その始まりとされたのは,1982年に国連によって開かれた「第1回高齢者問題世界会議」である。この会議では,高齢者人口が急増した現実を踏まえ,高齢者の生活や権利をどう保障するかについて議論がなされ,「高齢化に関する国際行動計画」が採択された25)。なお,1984年には世界保健機関が高齢者の健康を捉える指標として生活機能の自立度を提唱し,高齢者問題が病気や障害の問題から健康の問題へと転じてきた26)。さらに1991年,「高齢者のための国連原則」が決議され,「自立,参加,ケア,自己実現,尊厳」の5つの領域における高齢者の地位について普遍的な基準を設けられた25)

一方,先述のように,老化の原因解明や病気,障害の克服など,生物医学と言われる分野を中心に発達してきた老年学にも,1980年代後半から大きな変化が見られた。1986年にアメリカ老年学会大会のテーマとして「サクセスフル・エイジング(Successful aging)」が取り上げられたことと,1987年に著名な科学雑誌Scienceに掲載された「Human Aging: Usual and Successful」27)と題する論文をきっかけに,「サクセスフル・エイジング」という概念が世界中で高い関心を呼ぶようになった28)。上述の論文は,米国の老年医学者John Roweと社会科学者Robert Kahnによって執筆され,エイジングには「普通」と「サクセスフル」の2パータンがあるとされた。単に疾病や障害がない「普通」のエイジングに対し,「サクセスフル」なエイジングには,①病気や障害がないこと,②高い身体・認知機能を維持していること,③人生への積極的な関与(社会参加していること),という3つの要件がある27, 28)。日本でも,この「サクセスフル・エイジング」という概念的枠組と共に,これまでに成人病や疾病,障害など,高齢期のネガティブな側面に焦点をあててきた老年学が,高齢者の可能性という,ポジティブな側面へ目を向けるようになっていた29)。また,これまで老年学の研究はそれぞれの学問分野で縦割り的に行われてきたのに対し,「サクセスフル・エイジング」という共通の目標を設定することで,高齢者に関する学際的科学としての老年学が確立されはじめた29)

C. 1990年代~2000年代半ば

1970年に高齢化社会に入って以来,日本は長寿化と少子化が同時に進んだことで世界に例を見ない速さで高齢化が進み,僅か24年後の1994年には高齢化率が14%を超え,高齢社会となった1)。それに加え,1990年代初頭のバブル経済崩壊により,経済が停滞期に入ったことで,高齢者に関わる社会保障の負担が増大する一方で,税収等は落ち込み,抜本的な改革が求められるようになった。

1990年,老人福祉等福祉関係8法の改正は高齢者福祉政策における大きな制度的転換点となり,この改正により,市町村が福祉の先頭に立ち,“従来の施設ケアを中心とする体制から,在宅・地域を基盤にしたケアシステムの構築を目指す体制”12)[p. 54]に転換した。また,日本が高齢社会に入った翌年の1995年,政府は,高齢社会における施策の総合的な推進の必要性に迫られるなか,「高齢社会対策基本法」30)の制定に至っている。同法に基づき,内閣府に高齢社会対策会議が設置され,1996年,「高齢社会対策大綱」31)が閣議決定された。その後,1997年に“自立支援,利用者本位,社会保険方式”32)[p. 6]等の考え方を根底に持つ「介護保険法」が成立された(2000年から施行)。

さらに,20世紀の終盤になると,高齢者問題が社会の持続可能性という観点からの課題として捉えられ,「社会的弱者」として扱われた高齢者から,社会の担い手へと,大幅な政策転換がさらに加速された33)。1999年に策定された「ゴールドプラン21」34)では,活力ある高齢者像の構築を基本目標の第一とし,元気な高齢者は,積極的に社会的役割を担う存在になることが求められていた。2001年末に,最初の「高齢社会対策大綱」策定から5年ぶりの大幅な見直しにより,新大綱35)が閣議決定され,政府の基本姿勢が明確化された。そして,分野別の枠を越えて横断的に取り組む課題が設定され,関連施策の総合的な推進が目的となった。その中では,健康面や経済面で恵まれないというこれまでの画一的な高齢者像を見直し,高齢者がより主体的に参画できる社会づくり35)が掲げられた。なお,内閣府が1996年から毎年出版している『高齢社会白書』にも変化が見られた。2001年までの白書は,高齢者の世帯や経済状況等の統計的傾向の分析が主な内容であったが,2002年からは高齢者の捉え方に関する記述がなされるようになってきた16)。2002年版では,“多くの高齢者は(中略)旧来のイメージとは実態としても意識としても異なっており,自立した活動的な生活を送っている”36)[p. 19]との記述が見られ,さらに2003年版では「年齢だけで高齢者を別扱いすることについて」と題するコラムが設けられ,“旧来の画一的な高齢者像を見直すと共に,これを前提として確立されている高齢者を年齢だけで一律に別扱いする制度,慣行等についても見直していく”37)と述べている。

一方,21世紀初頭の日本人の平均寿命は終戦直後と比べ30歳も延びていた38)。平均寿命は生物学的限界に近づき続ける中,単に寿命を延ばすだけではなく,2000年にWHOが提唱した「健康寿命」という新たな寿命の指標が問われるようになった39)。また,老年学の第一人者である柴田博の25年間に及ぶ高齢者の追跡調査が出版され,8割以上の高齢者が自立している4)という結果が注目を集め,健康な高齢者は数としては大多数を占めることが明らかとなっている。こうした背景の中,老年学では日本型「サクセスフル・エイジング」に関する議論も1990年代から2000年代前半にかけて活発になった。「サクセスフル・エイジング」は,学問分野によっては異なる定義が提案されており,必ずしも統一したものがあるわけではないが,一般的な観点からは“身も心もつつがなく年をとっていくこと”40)[p. 2]と認識されている。柴田41)は,その達成の条件に「長寿」が入ることは大前提となる一方,「生活の質」と「社会貢献」の重要性について言及している。また,小田利勝42)はサクセスフル・エイジングのポイントを,①複合的,多元的であること,②高齢期における発達,成長に目を向けるべきこと,③老化の過程には,遺伝的資質よりもライフスタイルが強く影響すること,④社会環境条件に影響されること,⑤個人の目標や生き方に応じた多様な形式があることの5点にまとめている。

このように,老年学の研究が展開する中で,それらの成果に基づき,サクセスフル・エイジングを達成するための施策も行われるようになってきた。厚生労働省が掲げる「健康日本21(21世紀における国民健康づくり運動)」43)では「健康寿命の延長」と「生活の質の向上」を目標に掲げ,種々の施策がなされた。一般市民,特に高齢者の生活には,身体面だけではなく,心理面や社会面でもサクセスフル・エイジングを目指したライフスタイルの改善が浸透しつつある。

D. 2000年代半ば以後

2007年,高齢化率が21%を超えた日本は世界で初めて超高齢社会となった1)。加えて,戦後のベビーブーム世代(団塊の世代)が2007年から2010年にかけて段階的に定年退職の年齢に達し,大量退職により生じる社会的変化,いわゆる「2007年問題」は新しいタイプの高齢者問題を生じさせた1)。増加する社会保障費用の捻出や,高齢者を支える医療介護人材の確保,人口減少による経済停滞の対処等,将来への不安が広がる中,高齢者の社会参加が各方面で提唱されるようになってきた。

まず,施策面においては,高齢者の自立した生活や積極的な社会参加を確保することの重要性に鑑み,政府はハード面の整備を加速し,2006年には公共性のある建物を高齢者・障害者が円滑かつ安全に利用出来るような整備の促進を目的として,ハートビル法と交通バリアフリー法が統合され,「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」44)として施行された。また,安心して暮らすことのできる社会の構築を目指すために,2008年,厚生労働省により出された「安心と希望の福祉ビジョン」45)は3つの構想を設けている。その中では,“高齢者の増加を,すなわちマイナスと捉える基本的な発想を改めること”45)[p. 1]が第一要務であると述べ,“地域コミュニティにおいて一人一人が支え合い,役割を持って生きていくための「共助」の仕組みを整備する必要がある”45)[p. 2]と述べている。一方,高齢者介護を取り巻く環境の変化に臨機応変に対応するために,概ね3年ごとに改正されている介護保険制度は,2011年の改正46)で「地域包括ケアシステムの構築」を掲げ,団塊世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年を目途に,それぞれの地域の実情に合った医療・介護・予防・住まい・生活支援が一体的に提供される体制の構築を目指している。片桐恵子が指摘しているように,この時期の高齢者施策は,“高齢者に対してそれまでの「健康で元気」であることにより社会保障費などの増大を防ぐという間接的な期待から,ついに社会において地域コミュニティに役立つ人的資源として位置づけられた直接的な期待が生じ”33)[p. 54]たといわれる。

高齢者福祉施策のほか,教育行政面でも重要な動きが見られた。2011年に,文部科学省は高齢者教育の現状と課題について整理するとともに,超高齢社会においてプレ高齢者を中心とする成人が取り組むべき学びの在り方を検討することを目的として「超高齢社会における生涯学習の在り方に関する検討会」を設置し,翌年,高齢者学習支援の指針として『長寿社会における生涯学習の在り方について:人生100年いくつになっても学ぶ幸せ「幸齢社会」』47)が公表された。同報告書では,新たな学習の機会を通じて,高齢者が社会参画・地域貢献の役割を担っていくことの重要性が指摘され,図書館は,博物館や公民館などの施設と並んで,地域における学習拠点・活動拠点としての役割が大きく期待されている47)

なお,加齢に伴い急激な有病者の増加が指摘される認知症への注目も一層高まった。日本では,1986年に痴呆性老人対策本部48)が設置されて以来,様々な認知症対策が行われている。しかし,2000年代になっても,認知症の確定診断が早期に的確に行われなかったり,その後の医療と介護の連携が不十分であったりしたために,適切な治療や介護の提供が行われなかったというケースが後を絶たなかった49)。そこで,“認知症になっても本人の意思が尊重され,できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会”50)[p. 2–3]を構築することが必要との認識のもと,政府は2013年に「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」51)を策定した。2015年,世界保健機関の主催で「認知症に対する世界的アクションに関する第1回WHO大臣級会合」52)が開催された後,各国に具体的行動が呼びかけられ,諸改革が様々なレベル・領域で進行しつつある。同年,日本政府は「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」53)を策定し,認知症施策をより一層加速させた。さらに,2019年には「新オレンジプラン」を発展させた「認知症施策推進大綱」が取りまとめられ,“認知症の発症を遅らせ,認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を目指し,認知症の人や家族の視点を重視しながら,「共生」と「予防」を車の両輪として施策を推進”54)[p. 3]することを基本的な考え方としている。具体的には,認知症に関する情報発信の場として図書館を活用することや,認知症サポーター養成講座の対象を図書館職員にも広げることなどが挙げられ,図書館の存在感が強まるような施策となっている。

高齢者をめぐる様相の変化が社会的に大きな反響を及ぼしている中,日本老年学会・日本老年医学会では,高齢者の定義を再検討する学際的なワーキンググループを2013年に立ち上げ,様々な角度から検討を行い,75歳以上を高齢者の新たな定義とすることを提言した5)。この再定義の意義として,“支えられるべき存在としてのネガティブな「高齢者」のイメージを,社会の支え手でありモチベーションを持った存在としてのポジティブなものに変え,結果として,迫りつつある超高齢社会を明るく活力あるものにする”5)[p. 3]ことが挙げられた。

III. 「公共図書館における高齢者サービス」に関する文献収集とその概要

前章では,日本の人口動態や高齢者像の変遷,高齢者に関する施策の展開,及び老年学研究を含む複数の側面から,高度経済成長期から現在までの日本における高齢者を取り巻く社会的動向について検討した。本章では,「公共図書館における高齢者サービス」に関して収集した文献全体の概要をまとめる。

A. 文献の収集

対象文献の検索は,CiNii Articles,『図書館情報学文献目録』(BIBLIS PLUS),カレントアウェアネス・ポータル及び『図書館情報学研究文献要覧』を用いて実施した。網羅的かつ適切に資料を収集するために,原著論文に該当せずとも,レビュー論文,短報,講演記録なども収集対象とした。最終検索期間は「2020年12月31日」までとして統一した。

まず,CiNii Articlesを用いて,クエリを「(図書館)AND(高齢者ORシニアOR老人ORベビーブームOR団塊OR認知症)」として検索を行った。検索結果について,文献タイトルとアブストラクトの記述の確認を行い,判断が困難な時には全文の確認を行って,関連のないものを除外した。具体的な除外基準として,①図書館に関係がない,②高齢者に関することを主な内容としていない,③その他の理由(書評や取材記事など)の3つを設定した。その結果,CiNii Articlesから139件が抽出された。次に,BIBLIS PLUSにて「高齢者」「シニア」「老人」「ベビーブーム」「団塊」「認知症」のキーワードで検索し,重複の排除及び除外基準を適用し,25件を特定した。さらに同様な手順で,カレントアウェアネス・ポータルにて検索式を「高齢者ORシニアOR老人ORベビーブームOR団塊OR認知症」,記事種別を「カレントアウェアネス,図書館研究シリーズ,図書館調査研究リポート」とし,3件を追加した。最後に,『図書館情報学研究文献要覧』を調査した。調査範囲は,①『1970–1981年』巻のうち「図書館奉仕・図書館活動」欄全て,②『1982–1990年』巻のうち「図書館活動」欄全て,③『1991–1998年』巻のうち「図書館活動–利用者–成人/生涯学習–高齢者」欄,④『1999–2006年』巻のうち「図書館活動–利用者–成人/生涯学習–高齢者」欄である。上記範囲内で,タイトルに「高齢者」「シニア」「老人」「ベビーブーム」「団塊」「認知症」のいずれかを含み,かつ上述のステップで得られたものと重複しないものを1件追加した。最終的に168件が本稿の対象となった。

B. 対象文献の基礎情報

まず,文献ごとにタイトル,刊行年,筆頭著者名,雑誌名などの基礎的な情報を抽出し,まとめた。また,個々の文献を個体として扱うことに加え,ある特集に収録されるものを一括りにして捉えることは,その時点における当該分野での課題をより的確に反映しうると思われたため,特集記事の場合には特集名も記載した。

文献数の年次推移を第2図に示す。時期ごとに変動があるものの,長期的には増加傾向にある。

Library and Information Science 89: 1-23 (2023)

第2図 文献数の年次推移

また,「図書館と高齢者」に関する特集の詳細を第1表にまとめる。特集は全部で13件あり,それらを構成する記事の総数は66件で,対象文献の約4割を占めている。

第1表 「図書館と高齢者」に関する特集
年度特集雑誌収録数
1975身障者に対する読書サービスについて:
主として視覚障害者および寝たきり老人対策
図書館学5
1986高齢者と図書館みんなの図書館8
1999いま求められている「高齢者サービス」とは図書館雑誌9
2006高齢者と図書館現代の図書館6
2006シニアと図書館図書館の学校2
20072007年問題と図書館の今後1図書館界2
2007団塊の世代と図書館図書館雑誌7
2014シニア世代と図書館図書館雑誌4
2015図書館でも知っておきたい 高齢者の学習を支援するための予備知識LISN4
2015図書館の高齢者サービスLISN3
20172016年度図書館学セミナー:高齢社会と図書館図書館界4
2017図書館の高齢者サービスみんなの図書館6
2018人生100年時代に図書館は何ができるか図書館雑誌6
合計66
1ここでは,「図書館における高齢者サービス」に関連する2つの記事のみを対象とした

C. 対象文献の分類及び分析方法

次に,対象文献の分類及び集計を行った。初めに,テキストの通読によって,大まかな「文献の主題」を下記5つのカテゴリーに分けることができた。①高齢者の図書館利用状況,②高齢者サービスの現状,③高齢者サービスの実践,④高齢者に関わる関連知識,⑤高齢者サービスの展望/あるべき姿である。その内訳を第2表にまとめる。

第2表 「文献の主題」による分類
内容文献数
高齢者の図書館利用状況経験によるもの3 (2%)
調査によるもの13 (8%)
高齢者サービスの現状国内における調査13 (8%)
海外における調査8 (5%)
高齢者サービスの実践国内の事例74 (44%)
海外の事例17 (10%)
高齢者の関連知識高齢者の身体能力5 (3%)
高齢者の学習能力4 (2%)
高齢者サービスの展望/あるべき姿31 (18%)
合計168

「文献の形式」の観点からは,対象文献を下記3つに分類することができた。①「事例報告」(特定の1館または少数館を取り上げ,そこで実施されたサービスを紹介したり,検討したりするものなど),②「実証的調査・研究」(高齢者サービスの実態や問題点について調査を行い,その結果を分析したり,考察したりするものなど),③「論考・解説」(高齢者サービスの概説や展望を示すことを目的とするものなど)に分けることができた。その集計結果は第3表に示した。事例報告が81件と全体の約48%を占めている。

第3表 「文献の形式」による分類
文献の内容分類事例報告実証的調査・研究論考・解説合計
文献数81 (48%)47 (28%)40 (24%)168

そこで,文献ごとに図書館と高齢者の何を,どう論じていたかを具体的かつ的確に把握するために,上述の「文献の形式」ごとに,さらに詳しい分析項目を第4表の通りに設定した。各項目について,原文で言及がある場合には,その内容を抽出してまとめた。分析の詳細は次章で述べる。

第4表 「文献の形式」による分類ごとの抽出項目
文献の形式抽出項目
事例報告サービスの対象・内容・実施者・問題点/展望
実証的調査・研究目的・方法・対象・内容・結果/考察
論考・解説サービスに関する論点・結論

IV. 公共図書館における高齢者サービスの5つの時期とその特徴

文献内容並びに特集の組まれた時期を総合的に考慮すると,対象文献を第3図に示した5つの期間に分けることができる。本章では,各期間における「公共図書館における高齢者サービス」に関する文献の特徴を基礎としたうえで,Ⅱ章で明らかとなった高齢者を取り巻く社会的動向を踏まえながら,日本の公共図書館における高齢者サービスの変遷について分析していく。

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第3図 対象文献の5つの時期区分

A. 第I期:高齢者に対する意識の萌芽(1970年代~1980年代半ば)

2章のAで述べたように,日本では世界に先駆け1963年に高齢者を対象とする単独の法律として「老人福祉法」が公布された後,高齢者が豊かな生活を享受しうる条件が急速に整備されはじめた。一方,加速した高齢者福祉の整備が,「弱者」への援助を行う手段にもなり,高齢者のイメージを福祉に頼る「弱い」者へと移行させた。特に人口高齢化が始まった1970年以後,こうした傾向がますます強まった。

このような高齢化がもたらした二面性が進行する中,公共図書館では,政策レベルでの変革には及んでいないものの,1972年の『文芸春秋』に「図書館の『恍惚の人』たち」55)という記事も刊行され,高齢者という利用者層が言及されるようになってきていた。この記事は,当時の横浜市立図書館の司書が自館に集まる高齢者の図書館利用像を描いたものである。記事のテーマは,認知症を扱った文学作品である『恍惚の人』を借りてはいるが,内容は認知症高齢者に関するものではなく,読書が生きがいである高齢者に,地域の公共図書館が利用されているという事例を示している。

図書館関係の雑誌では,若干遅れたものの,1975年の『図書館学』に掲載された「身障者に対する読書サービス:主として視覚障害者および寝たきり老人〈シンポジウム〉」56)特集が最初である。特集に収録された5件は,事例報告3件と論考・解説2件が含まれており,それぞれ図書館代表57),利用者代表58),社会福祉施設代表59),ボランティア代表60)によるものである。当時,視覚障害者読書権保障協議会による読書権運動から影響を受け,公共図書館では視覚障害者への注目が高まった時期でもあり61),特集のタイトルからも分かるように,点字・録音資料の整備や目次の提供など,視力障害者への対応と共に,身体の不自由な高齢者に対する「読書」サービスをめぐる問題点が議論されている。この一連の記事から,既存の障害者サービスを見直すなどして,そこから高齢者対策を考え始めるという傾向が明確に窺える。

その後,1979年62)と1983年63, 64)に3件の記事が出された。いずれも今後の高齢者サービスに対する提案を述べている。主な内容は,来館できない高齢者のための館外サービスや,老眼等の視力障害に対応した大活字本の整備などである。

このように,第I期は文献数が少ない。図書館関係者あるいは高齢利用者による個人的な提案と,視覚障害者の読書支援のついでに行われた高齢者(特に寝たきり老人)の支援事例の報告がほとんどであり,実証的な調査・研究は見当たらない。公共図書館が「身体が弱っている」利用者としての高齢者を意識し始め,彼らを既存の障害者サービスの延長線に位置付けながら今後の対策を講じようとしていることが見てとれる。このように高齢者がどのような人々で,どのような課題があるのかが組織的に把握されているわけではないが,サービスの必要性が認識され始めた萌芽の段階と言える。

B. 第II期:サービスの模索の開始(1980年代半ば~1990年代半ば)

第II期は,日本の経済状況が大きく変化した時期にまたがっている。Ⅱ章のBとCでは,1980年代以後における,高齢者医療費の急増に対する懸念が広がるなかの,高齢者福祉の見直しを求める政府の一連の重要な施策や,バブル経済崩壊後の高齢社会へ向けた抜本的な改革について言及した。また1980年代以降は,国際社会においても高齢者問題に目が向けられるようになった時期でもあり,高度経済成長期に定着した「社会的弱者」としての高齢者像は,国内外からの影響を受け,少しずつ変化を見せていた。

一方,1986年に国際図書館連盟(IFLA)東京大会が開会され,部会による利用対象者の拡大提案を契機として,日本の図書館界では,特に非識字者や施設生活者,在日外国人を対象とする多文化サービスに関心が寄せられた65)。高齢者への直接的な言及はなされていないが,サービスの対象範囲を広げることが公共図書館の課題となっていた。

こうした中,高齢者に関する文献数が最初の小さなピークを迎えたのは,『みんなの図書館』に敬老の日の企画として「高齢者と図書館」の特集が組まれた1986年である66)。この特集には8件の記事が掲載されたが,ほとんどが事例報告である。内訳は,図書館職員による国内館の報告が4件であり,具体的な内容として,身体が弱っている高齢者を意識しながら,高齢者施設に対する朗読会や紙芝居67, 68),老人読書室の設置69)など,自館での試みが紹介されている。こうした記事での紹介によれば,第I期では提案程度に止まっていた高齢者向けサービスが,極めて少数館ではあったものの,1980年代半ば頃から実施される傾向がみられるようになってきていることが示された。その他,英国70)と米国71)の高齢者向け館外サービスに関する事例報告がそれぞれ1件収録され,いずれも,図書館職員が研修生として海外館を訪問する際の見聞に基づいて記されたものである。研修の主眼が高齢者サービスになかったことから,必ずしも網羅的な検討になっているとは言えないが,海外の動向に注目が向けられ始めたことがわかる。

このように,国内外の事例紹介の特集が組まれたことで,公共図書館における高齢者の存在感が益々大きくなっていったと考えられる。しかし一方で,この特集の編集後記に“実際にどこでどんなことが行われているかつかめず,一時は特集とりやめとも思いました”66)[p. 41]という記述に示されるように,「高齢者サービス」はまだ具体像が見えず,依然として曖昧模糊としているとの印象がもたれていたことが見受けられる。

その後,「図書館と高齢者」に関する実証的調査が初めて実施された。1988年,大橋一二72)は尼崎市における高齢者の読書実態調査を踏まえながら,公共図書館を対象に高齢者対策に関する調査を行っている。その結果によれば,64館中60館が高齢者対策の必要性を認める一方で,約30館で大型活字本の購入と拡大鏡・拡大書見器の設置が実施されたほか,“その他の対策は数的に見て微々たるもの”72)[p. 234]であった。大橋によれば,“殆どの図書館が高齢者対策の必要なことは十分解っていても,その具体的な対策を持たないというのが現実”72)[p. 234]であったという。

1990年代に入り,「高齢者のための国連原則」の採択や,米国を中心とする「サクセスフル・エイジング」に関する議論の活発化などがあった。その影響を受けた形で,「図書館と高齢者」の文献は新たな特徴を見せている。海外の先進事例に関するものが顕著に増え,その議論も1980年代の単純な見学による事例報告のレベルから,より緻密な分析に基づく実証的な研究へと移行する傾向が見られる。高島涼子によるものがその代表例として挙げられる。高島は,1990年に高齢者の持つ問題及び高齢者に対する図書館のあり方について,米国の状況を詳細に検討する論文73)を発表して以来,一貫して米国の動向に注目し,4年間で4本の論文を出している。内容としては,米国の公共図書館における高齢者サービスの変遷を分析した上で,先進事例として高齢者向けの情報提供サービスである「I&Rサービス」及び各種の高齢者プログラムについて紹介し,その導入を提案するもの74)や,老年医学における「老化現象」などの知見を踏まえ,高齢者を障害者の枠組みで扱うことの妥当性を問い,図書館のサービスは高齢者の「記憶の老化・身体の老化・精神の老化」という3つの側面を統合して考慮した形で提供すべきであると主張しているもの75)などが挙げられる。

総じて言えば,II期では,高齢者サービスを障害者サービスに付随する形で実践し始めている。一方,ごく少数ではあるが,海外の動向に対する本格的な研究73, 74)や,自国における調査72)も現れ,今後のサービスに向けた模索が始まったと言える。

C. 第III期:独立した利用者カテゴリーへの移行(1990年代半ば~2000年代半ば)

1990年代後半,文献数は2番目のピークを迎え,第III期に入っている。Ⅱ章のCで述べたように,日本は高齢化率が14%を超え,高齢社会に突入した1990年代半ば頃,高齢社会における総合的な施策を示す「高齢社会対策基本法」が施行され,同法の規定に基づき「高齢社会対策大綱」が作られた。さらに20世紀の末になると,国内における「ゴールドプラン21」の制定や,国際高齢者年における世界各国で幅広い分野における研究集会やシンポジウム等の啓発事業が行われたことにより,「社会的弱者」として扱われた高齢者から,社会の担い手へと,大幅なイメージ転換が加速された。

こうした中,図書館界における高齢者問題への関心も一層高まった。2001年,「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」76)が公表され,二の(四)「利用者に応じた図書館サービス」の部分では,「成人」「児童・青少年」「障害者」「地域に在留する外国人等」と並んで,「高齢者」へのサービスが単独の形で提起されている。高齢者に対するサービスの充実に資するため,“高齢者に配慮した構造の施設の整備”,“大活字本,拡大読書器などの資料や機器・機材の整備・充実”,“関係機関・団体と連携を図りながら,図書館利用の際の介助,対面朗読,宅配サービス等の提供”76)の3点の充実に努めるものとしている。内容に関しては,障害者サービスとの相違は示されていない。しかしながら,高齢者サービスを障害者サービスから独立したカテゴリーへと変化させた点においては,政策レベルでの大きな一歩があったと言える。

この時期に出されている高齢者に関する特集として,1999年『図書館雑誌』の「いま求められている『高齢者サービス』とは」77)が挙げられる。本特集に収録されている9件の記事は,後ほど言及する海外に関する1件を除き,全てが国内の事例報告である。そのうち,6つの公共図書館における高齢者サービスの実践が報告され,そのどれもが来館できない高齢者,特に施設入所者をターゲットにした,朗読会や紙芝居,団体・個人貸出の実施に関する内容である78–80)。つまり,国内では高齢者サービスを自ら実践しているところが多少増加したが,実際にどのようなものが行われていたかに関しては,II期の曖昧模糊としている傾向が続いており,障害を持つ高齢者へのアウトリーチ・サービスを主な高齢者対応として捉えていることがわかる。

一方,III期では,II期と同じように,高齢者に関する特集が1つのみであるが,文献数がII期の約2倍に上ることから,特集以外でも,高齢者に関するテーマが取り上げられるようになったと言うことができる。それら特集以外のものから,国内における実証的調査が増えること,及び海外への注目の広がりと深まりが見られること,という2つの特徴が見出される。

第1の特徴の実証的調査の増加については,具体的には,「図書館を対象とする」3件と「高齢者を対象とする」1件が含まれている。「図書館を対象とする」ものの例として,風間智子81)によるものが代表的である。風間は,高齢者サービスに対する取り組みの姿勢が,公共図書館の設置母体及びサービス対象住民の高齢化率の高低によって異なっているかどうかを調査するために,全国283館に対して,資料・設備・サービス・運営などの面での高齢者の利用に関する大規模な調査を行っている。他には,建築工学分野の研究者によるものがあるが,愛知県内78館に対して,建築設備面に特化した高齢者の利用調査82)などが挙げられる。調査の結果,建築設備面の改善と,運営上の配慮,配本や移動図書館の導入等が,高齢者の利用の拡大につながるという結論に至っている。また,「高齢者を対象とする」実証的調査の例としては,林貴光83)による所沢市の公共図書館における高齢者の利用状況を示したものが挙げられる。林は,市内3館の来館高齢者141名に対し,図書館の利用頻度や利用目的,実際に利用する空間,それらの空間に関する感想などについて調査を行っている。その結果,高齢者の回答について,他の年齢層とその利用形態に大きな差は見られない一方で,高齢者のバリアフリーに対する認識はそれぞれであり,画一的な対応では不十分な状況であるということが明らかとなっている。

この時期において国内の実証的調査が増えるようになったことは,主として障害者サービスに付随する形で始められた高齢者サービスについて,徐々に一つの独立したカテゴリーとして重視され始めたことを示していると言える。しかし,いずれの調査においてもアンケート形式が採用され,詳細を把握するのは難しい一方で,質問項目の設置にもばらつきがあり,「高齢者」あるいは「高齢者サービス」に対する統一的な認識はまだなされていないことがわかる。

第2の特徴の海外への注目の広がりと深まりについては,高島涼子はII期に続き,米国に関する実証的な研究を行い,海外の先進的な実践を紹介する一方,それらの実践事例の背後にある経緯を描き出すことを試みている84)。高島は,1961年のホワイトハウス会議後に,高齢者のための法律や政府部局の制定などが行われたことを社会変化と捉え,こうした変化に伴い,高齢者観と高齢者サービスがどのように変化を遂げるかについて検討している84)。高島の他に,白根一夫は英国に主眼を置き,高齢者の「精神の老化」の予防の重要性について言及し,英国の図書館における高齢者向けの回想法を主に取り上げている85, 86)

総じて言えば,III期の公共図書館の現場では従来とは大差なく,高齢者の身体的不自由に対応するサービスをメインとしているが,同時に高齢者の精神的健康にも注目が集まり始めている。また,国内の実態調査が増える一方,海外への注目が深まったことから,高齢者が徐々に一つの独立したカテゴリーとして重視され始めたことが分かる。この時期は,「高齢者サービス」独自の下地が整いつつ,独立した方向に移行する時期と言える。

D. 第IV期:高齢者への認識の深化及び対策の多様化(2000年代半ば~2010年代半ば)

対象文献の4割近くを占めるIV期は,日本社会における高齢者問題への注目度が急速に高まった時期と重なる。Ⅱ章で述べたように,2007年からの超高齢社会の本格的な到来に加え,団塊の世代が2007年から相次いで定年退職を迎えることに伴う,退職金負担,労働力不足,消費への影響など,社会に及ぼす影響は非常に大きいものがあった。政府がさまざまな対応策の検討に乗り出すと同時に,高齢者問題が図書館の熱い関心を集めるトピックのひとつになってきていた。

2006年と2007年に,4つの主要な図書館系雑誌『現代の図書館』87)『図書館の学校』88)『図書館雑誌』89)『図書館界』90)では特集が相次いで組まれており,高齢者に関わる話題が大きな注目を浴びていた。上述4つの特集においては,それまでの特集は事例報告で主に構成されていたという状況から一変して,事例報告のほか,実証的調査・研究と論考・解説も存在感を増している。具体的に見ると,17件のうち,事例報告が6件,実証的調査・研究が2件,論考・解説が9件である。それらの文献からIV期における2つの主な変化が見出される。

1番目の変化は,「高齢者」への認識が深化していることである。2章のCで述べたように,老年学では日本型「サクセスフル・エイジング」に関する議論が1990年代から2000年代初頭にかけて活発化するようになったことがわかる。それより若干遅れて,2006, 2007年になると,図書館界では「図書館の高齢者をどう認識すべきか」の問題をめぐって,高齢者観の変化を訴えた論考・解説が数多く見られるようになり,そのうちの一部は老年学の知見をも取り上げてきた。教育老年学と生涯学習論の研究者である堀薫夫は,「2007年問題」の出現を機に,前述の『現代の図書館』と『図書館界』の特集に2本の論文91, 92)を発表し,高齢者を「福祉・保護」イメージと「生活者・活動者」イメージの二重性の中で捉える視点を提起している。近江哲史93)は,高齢者の立場から図書館利用に関する提言を行い,自らの経験から高齢者を「ヤング・シニア」と「オールド・シニア」に分けて議論している。この分け方は,75歳を境にそれ前後に分けるという区別を一般的であるとするものの,その人その人の心身の状況によって年齢とは異なる分類に含まれることも認めている。溝上智恵子ら8)は,堀と近江の議論を踏まえ,今後の高齢者を対象とした図書館サービスは一元的に考えるのではなく,少なくとも“アクティブ・シニアと非アクティブ・シニア”8)[p. 36]のように二元的に考える必要があると主張している。さらにその後,呑海沙織94)は社会老年学においてLaslettによって提唱されたライフコースの段階分け理論であるサード・エイジ論を取り上げながら,高齢者を「サード・エイジ」と「フォース・エイジ」という枠組みで捉え直している。高島涼子は新たな論考95, 96)を執筆し,「高齢者サービスとは何か」「高齢者をどう捉えるべきか」について議論し,高齢者の異なるニーズに対応する必要性を指摘している。また,海外の高齢者観に目を向ける入江有希97)の実証的調査が見られる。入江は英米のサービスガイドラインから見る高齢者観について分析し,日本独自の認識が必要であることを提起している。いずれにしても,この時期では,サービスの対象を「高齢者」として一括りに捉えるのではなく,その二重性や二元性を認識した上でサービスを提供すべきという点がますます強調されている。公共図書館の高齢者に対する認識は,福祉の範疇にとどまっているIII期より,国の高齢者に関する施策や国際社会の高齢者動向との間でのギャップが確実に縮まりつつあるといえる。

一方,高齢者の身体特性に対する客観的な理解も深まる傾向にある。2006年に「高齢者,障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」の施行などから影響を受け,高齢者の特性を客観的に認識した上でのバリアフリー改善策が話題となり,図書館施設のハード面での改造に関するものが目に止まるようになる。木野建築設計事務所の木野修造98)によるものがその代表例として挙げられる。木野は,高齢者の運動能力及び視覚能力,聴覚能力を詳述した上で,図書館の空間デザインを分析している。その後,2015年に『LISN』誌は2号連続で特集99, 100)を組み,高齢者の読書と眼球運動101)や高齢者の心理特徴とコミュニケーション102)など,高齢者にサービスを提供するための予備知識に関する記事を掲載している。

2番目の変化は,これまでとは異なる高齢者サービスの試みが着実に見られるようになったことである。この変化には2つの特徴がある。第1に,海外から得た知見を日本の図書館に生かしていることである。具体例として,白根103)による斐川町立図書館「思い出語りの会」の紹介記事が挙げられる。白根はIII期で最も早く英国の回想法を図書館サービスとして日本に紹介した後85, 86),引き続き回想法を取り入れた日本の公共図書館の取り組みに注目している。第2に,団塊の世代を代表とする「元気な高齢者」へのサービスが実践されていることである。先述の文部科学省による『幸齢社会』報告書などの影響を受け,公共図書館は地域における学習拠点・活動拠点としての役割が大きく期待されている。2014年『図書館雑誌』による「シニア世代と図書館」104)の特集では,鳥取県立図書館の「いきいきライフ応援サービス」105),吹田市立千里図書館の「自分史講座」106),八王子市中央図書館の「八王子千人塾」107)の3つの事例が報告され,いずれも高齢者の生きがいづくりや社会参加を支援する好例である。これは公共図書館が高齢者という利用者グループに対して,身体が弱まっている人だけではなく,元気な人をも考慮に入れ,より広範囲の対象を「高齢者」として捉えるようになったことの現れと言えよう。

このように第IV期は,高齢者への認識が深まりつつあり,図書館現場においても高齢者サービスを障害者サービスから脱却させる動きが本格化したと言える。従来の体の不自由な高齢者に加え,元気な団塊世代も視野に入れ,高齢者の異なるニーズに合わせた対応に着手しはじめた時期として特徴づけられる。

E. 第V期:認知症への注目及び連携に向けた模索(2010年代半ば以後)

第V期の僅か5年間に,文献数が50件に達している。その大きな理由として,「認知症」というキーワードが高齢者サービスに加えられ関心を集めたことが考えられる。Ⅱ章「D. 2000年代半ば以後」で触れたように,高齢化の進展に伴って急増する認知症への対応として,日本政府は2010年代半ばから,「認知症施策推進5か年計画」「認知症施策推進総合戦略」などの一連の施策を打ち出し,認知症対策を加速させた。

こうした背景のもと,第V期には「図書館と認知症」について考察する文献が顕著な増加を示し,50件のうち30件を占めている。その代表として,呑海沙織ら108, 109)による「超高齢社会と図書館研究会」のものが挙げられる。当研究会は,筑波大学図書館情報メディア系の研究者を中心に,関連分野の研究者や図書館員,医療福祉関係者を交え,海外の認知症支援の動向を踏まえながら,日本で「認知症にやさしい図書館」の実現に主眼を置いて研究している。同会はこのテーマをめぐって一連の研究を発表したほか,2017年に,IFLAの「Guidelines for Library Services to Persons with Dementia」110, 111)をもとに,日本の文脈に合わせた「認知症にやさしい図書館ガイドライン(第1版)」112)を作成した。これは図書館における認知症対策の実践を促す有効な指針となっている。上述の認知症をめぐる動向のほか,2017年に呑海が研究主幹をつとめた国立国会図書館の図書館調査研究レポート7)は,論考と調査を通して,日本における図書館の高齢者サービスを総括的にまとめたものである。

このように,認知症に関する理論的研究が進められる中,近年では国内の公共図書館での「認知症にやさしい図書館づくり」の実践例が報告され,図書館の現場で一定の成果が得られたことが示されている。川崎市立宮前図書館は「認知症の人にやさしい図書館プロジェクト」を地域の福祉担当者との連携により実施している7, 113)。その内容として,「認知症の人にやさしい小さな本棚」の設置や認知症サポーターの養成,高齢者福祉施設での読み聞かせ講座などが挙げられる。その他,日向市大王谷コミュニティセンター図書室と,日向市社会福祉協議会が連携して実施する認知症支援事業7)なども紹介されている。また,上述いずれの事例も,当該地域の地域包括ケアシステム推進の一環として位置付けられ,認知症高齢者の地域での生活を支えるためには,公共図書館がどのような役割を果たすべきか,どのように地域にふさわしいものにするか,各自の自主性や主体性に基づき,地域の特性に応じて試みている様子がうかがわれる。

総じて言えば,「認知症」がキーワードとなる第V期は,公共図書館の高齢者あるいは高齢者サービスに対する理解がさらに進み,包括的になっていると考えられる。公共図書館はさらなる連携・協働を模索しながら,高齢者サービスを推進している。

V. 考察

本章では,第IV章で検討した公共図書館における高齢者サービスに関する研究の変遷を,高齢者に関わる社会的動向との関係で捉えて作成した変遷図(第4図)を提示し,それに基づいて考察を行う。総じて言えば,上述した両者の間には強い繋がりがあることが明らかとなった。時期ごとに違いが見られるが,本稿で取り上げた高齢者をめぐる社会的動向,すなわち日本の人口動態や高齢者像の変遷,高齢者に関する施策の展開,老年学研究の発展が織りなす社会的動向は,以下に述べるように,ほぼタイミングよく図書館・情報学の研究に反映されていることが分かる。

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第4図 公共図書館における高齢者サービスに関する文献の変遷と高齢者に関わる社会的動向

図書館が高齢者の存在を意識し始める第I期では,高齢化社会の到来や,「福祉・医療・介護」の整備を中心とする国の高齢者に関する政策の発足,「寝たきり老人」の社会問題化などにより,日本における高齢者問題に社会的な関心が向けられ始めた時期とほぼ一致している。加えて,視覚障害者読書権保障協議会の活動により,公共図書館が障害者サービスで脚光を浴びるようになり,これらの要因によって,障害者の一部としての高齢者が公共図書館の視野に入るようになっている。文献では,公共図書館における高齢者サービスの必要性やサービスに対する展望が関係者により度々言及されており,障害者に関連して「寝たきり老人」を中心とする対策を考慮する事例もわずかながら見られるようになる。この時期では,社会全体において「高齢者対策」を福祉・医療・介護の整備とほぼ同じように捉える傾向にあり,公共図書館もその影響を受け,「高齢者サービス」というよりも,「加齢に伴い発症しやすい視力や行動の障害」への福祉的対応を考慮し始めるものと考えられる。公共図書館の「高齢者」に対する思考はまだ射程範囲が狭い一方で,「障害者」との区別があまり明確にされていなかったように思われる。

オイルショックなどの影響で経済基調や社会環境の変化が激しい第II期では,政府による高齢者に関わる一連の重要な施策が行われたものの,福祉・医療・介護の改善に焦点を当てるという第I期の傾向に変わりはない。こうした中,公共図書館における高齢者サービスの実践は,第I期よりも若干の広がりが見られるが,相変わらず障害者サービスに付随する形で進められている。一方,国際的な議論では,高齢者に関する議論は単なる「社会的弱者」に対する支援の範疇を越え,高齢者の「自立」にも目を向けられるようになってきている。こうした新たな視点は,日本の図書館の実践にまでは影響を及ぼしてはいないものの,高島涼子を代表とする研究者により,公共図書館の高齢者をめぐる議論に持ち込まれ始めていた。

第III期になると,高齢化社会から高齢社会に移行したことを背景として,政府は高齢社会における施策の総合的な推進の必要性に迫られていた。この時期に制定された「高齢社会対策基本法」は,第I, II期の焦点となる医療・福祉・介護に加え,高齢者の雇用や社会参加,生活環境なども視野に入れ,高齢社会全般にわたる包括的なものとなっている。また,「ゴールドプラン21」の策定などにより,社会的弱者として扱われた高齢者から,社会の担い手へと,大幅な政策転換が加速された。こうした中,公共図書館における高齢者をめぐる動向は,国の高齢者に関する施策あるいは国際社会の高齢者に関する動向とのギャップが鮮明に見えてきた。確かに,図書館政策のレベルでは,「公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」の策定が高齢者サービスを障害者サービスから独立したカテゴリーへと変化させたことで大きな一歩と見なせるが,この基準で提示されたものは,障害者サービスとの相違がほとんど示されておらず,福祉の範疇にとどまっている。このような政策は図書館の現場にも影響を及ぼし,文献に見られる第III期は,従来とは大差なく,高齢者の身体的不自由に対応するサービスをメインとしている。しかし一方で,高齢者の精神的健康への注目や,国内における実態調査の増加,海外での高齢者サービスに関する研究の深化など,II期とは異なる傾向が窺われる。これは,図書館における高齢者サービスが独立したものとしてみなされる途上にあったことを示すものと言える。

超高齢社会の本格的な到来や「2007年問題」の時期と重なっている第IV期では,政府がさまざまな対応策の検討に乗り出しているが,高齢者に対する間接的な期待(健康で元気)というよりも,より直接的な期待(人的資源)が生じている。文部科学省による『幸齢社会』報告書の影響を受け,公共図書館は博物館や公民館などの施設と並んで,高齢者の社会参画や地域貢献を支えるための,地域における学習拠点・活動拠点としての役割が大きく期待されている。第III期に政府の高齢者に関する施策との間にギャップが見られた図書館の高齢者対策は,公共図書館における熱い関心を集めるトピックのひとつとなり,新たな議論と試みが現れてきた。画一的な高齢者像の見直しや,高齢者の特性の分析,図書館の現場における高齢者の社会参加や生きがいづくりを支援する事例などから,図書館における高齢者サービスを障害者サービスから脱却させる動きが本格化したと言える。

最後に,対象文献において認知症が焦点化されている第V期は,政府の認知症施策の加速化や,図書館現場における認知症利用者への対応の増加114)等から,直接的な影響を受けている。有病率が年齢とともに急激に高まることから,「認知症」は高齢者を考慮する時に避けられないものとして,公共図書館に強く認識されている。この時期では,「超高齢社会と図書館研究会」によるものを代表とする図書館と認知症に関する理論的研究が進められる一方,国内の公共図書館における「認知症にやさしい図書館づくり」の実践例も報告されている。その多くは,外部との連携・協働を重視していることも窺える。

本稿では,高齢者をめぐる社会の動向を包括的に捉えることで,文献から取り上げられる公共図書館の高齢者サービスに関わる過去の推移を社会全体と関連づける文脈で理解することができた。以上の分析を踏まえ,高齢者サービス研究の今後について次のような課題が見えてきた。

第1に,高齢者をめぐる様相は時代とともに変化しているという点から見ると,高齢者の実態に関する検討を継続的に行うことが重要であると考えられる。今後は,例えば,アンケート形式の調査だけではなく,高齢者についてより理解を深めることのできる定性的な調査を実施したり,調査の対象を「図書館の高齢利用者」だけではなく,利用しない高齢者にも広げて実態を把握したりすることが求められる。また,第IV期以後に見られるようになってきた,加齢とそれに伴う諸問題に対して学際的に研究を進めてきた老年学の知見を生かし,図書館・情報学における議論と結びつけた研究をさらに進めることも期待される。

第2に,上の点とも関係するが,高齢者のニーズや課題はますます多様化・複雑化しているため,高齢者サービスの研究は,それらのニーズをめぐるダイバーシティーの視点を考慮して行う必要があると考えられる。今後は,第V期に盛んに行われている認知症をめぐる課題に引き続き注目する一方で,元気な高齢者の社会参加などに関する問題点をより掘り下げて分析していくことも重要である。

謝辞Acknowledgments

本研究は,「潮田記念基金による慶應義塾博士課程学生研究支援プログラム」の補助を受けて実施しました。また,本稿の執筆に当たり多大なご指導・ご支援をいただきました,慶應義塾大学文学部図書館・情報学専攻の池谷のぞみ先生並びに池谷研究室の皆様に深く感謝申し上げます。

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111) IFLAによるガイドラインの発行は,認知症高齢者に必要な図書館による対応が世界的に検討されるに至った契機であると言われている。ただし,このガイドラインが発行された2007年は,筆者の区分「第IV期」に該当するが,第IV期の文献群のうち,ガイドラインについて言及があったのは2009年の翻訳記事「図書館における新たな視点:認知症の人のためのサービスガイドライン」のみであった.

112) 超高齢社会と図書館研究会編.認知症にやさしい図書館ガイドライン(第1版).2017. http://www.slis.tsukuba.ac.jp/~donkai.saori.fw/a-lib/guide01.pdf,(入手2023-02-01).

113) 舟田彰,竹原敦.特集,人生100年時代の作業療法持続可能な高齢者の社会参加:地域包括ケアシステム推進の中で図書館と作業療法が協業できること:川崎市立宮前図書館の「認知症の人にやさしい小さな本棚」の実践から考える.東京作業療法.2020, vol. 8, p. 20–26.

114) 舟田彰.特集,2016年度図書館学セミナー:地域包括ケアシステムと図書館:“認知症の人にやさしいサービス”の現状とこれから.図書館界.2017, vol. 69, no. 1, p. 11–18.

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